まことしやかな恋
物陰からひっそりとカメラのレンズを向け、喧嘩の一部始終を撮影する。多勢に無勢だが、相当な人数に囲まれてもうちの生徒は倒れず未だに反撃をしていた。
あ、いい蹴りだ。
丈夫な彼が勝利するまで観戦していたいけど、そういうわけにもいかないのが大人の都合。
「────ハイハイ、そこまで。証拠の動画は抑えたから警察に持ち込まれたくなければ即座に解散」
パンパンッ!
両手を叩いて音を立てながら登場すれば、公園内にいた全ての視線が自分に集中した。蜘蛛の子を散らすように散って欲しかったが、濁点混じりの「あ?」を繰り返す不良たちは血気盛んだったようで。
「オンナが邪魔すんじゃねえよ」
「ヤラれたくねえなら消えろクソアマ!」
「……」
素直に解散してくれるとは思ってなかったけど、口の利き方がなってないな。
うちの生徒らしき青年に視線を向けると、夜に紛れる真っ黒な髪揺らし、瞠目していた。細身な上に肌が白いから不良には見えないけど、目つきは悪い。
怪我はあちこちしてるが、まあ大丈夫だろう。
「憂さ晴らしにちょうどいいか……」
荷物を木のベンチに置いて、屈伸する。大人は準備運動しないと怪我するし、筋肉痛も来るから。最悪だよアラサー。