まことしやかな恋
今度こそ去ろうと回れ右をして、足がもつれた。
受け身の体勢を取ろうとしたが、わかっているのに身体が動かない。散々運動してアルコールが回ったせいだ。
このままだと、公園の地面に顔面ダイブ……。
「あっぶねぇ……な……」
ぐいっと力強く腕を引かれた。
秋の柔らかい花の匂いが、鼻腔を掠める。
少し焦った声が耳元でして、お礼を言おうとするも踏ん張りが効かず。けっきょく雪崩れるように生徒を下敷きに転んでしまった。
「いってぇ〜……」
「いてて」
間抜けな効果音がつきそうな転び方。
反射的に瞑った瞼を開けると、青年の端正な顔立ちが至近距離にあって、息するだけで捕まりそうな状況に成年済みの大人は動揺してしまう。
不良の彼が地面に頭を打たないように咄嗟に手を伸ばしたが、同じように彼も私の頭を庇うように抱きしめてくれていた。
つまり、傍から見たら、抱きしめ合っているような光景……。
「青少年健全育成条例違反!!」
「うるせぇな」
「私の不手際で申し訳ありません。庇ってくれてありがとうございました。捕まりたくないのでこれにて失礼します」
「だから危ねぇって……やべ」
立ち上がろうと上体を起こすも、次は不良の彼が体勢を崩して、第二のプチ雪崩。
「いたっ……」
「……」
笑えない顛末。
互いの唇の端に、血が滲んだ。