まことしやかな恋
本と植物に囲まれた嗣海の部屋は居心地がいい。落ち着く色味の家具も好みだ。
「こーら、髪乾かしてるからまだ寝ないで。俺の太もも枕にしないの」
「ん゛〜……」
「唸っても怖くないよ」
甘やかすような音色で、頬を擽られた。
丁寧に乾かし終えたふわふわの猫っ毛を櫛と冷風で整えられ、仕上げに、お利口さんと言わんばかりに頭をぽふぽふと撫でられる。
私は微睡みと格闘しながら、今日の嗣海はご機嫌だな、と他人事の感想を脳内に綴った。
「ソファで寝ないよ〜」
あやすような声に「ん」と腕を広げると、逡巡したのちに抱えられる。
横抱きにされ、振動に身を委ねていると寝室のベッドにそっと寝かされた。ゆとりのあるクイーンサイズのベッドは、嗣海の匂いがする。
てしてし、とシーツを叩いた。
「抱き枕いる?」
「いる」
「え、あ〜……俺が抱き枕されるんだ……」
部屋着の裾を引っ張ると、躊躇うような素振りをみせた嗣海がおっかなびっくりベッドの端っこに座って身体を縮めるように寝る。
ムカつく距離感だ。
「うわ〜、引っ張られてる〜」
「抱き枕うるさい」
「俺の胸筋を枕にするの? え〜、しかも抱きついちゃうんだぁ……」
「ふん」
顔を埋めて、目を閉じる。
嗣海は諦めたように息を吐いた。
「急に家来て、甘えて、どうしちゃったの」
「……だめ?」
「葵子なら全部いーよ」