まことしやかな恋

 降り注ぐ声も言葉も蕩けそうなほど甘い。自分だけが許されている事実を噛みしめて、胸の内に広がる充足感に口元を綻ばせた。


「暗くするよ」

「ん」


 常夜灯に切り替えた部屋が、薄明かりに包まれる。

 後頭部に顎が乗った。ぴったりと密着してるせいで見えないけど、猫っ毛の毛先を持ち上げ、くるくると指に巻いて遊んでいるらしい。

 小さく「ふわっふわ」と呟かれた。


「髪、気に入ってるね」

「うん。葵子を気に入ってるから、このふわふわ猫っ毛も好きだよ」

「……」


 思わせぶりな発言に、まぶたを開ける。

 少しだけ視線を上に向けると、私しか映していない瞳が不思議そうに瞬いていた。


「眠くなくなった? 俺とお喋りする?」

「ねむい」

「うん、寝ていいよ」

「……つぐみ」

「ん?」


 名前を呼べば、慈しむような眼差しの嗣海が首を傾げる。
 
 本当は、もっとちゃんと、体内に燻るアルコールの力を借りずに、向かい合って話したかった。微睡みに邪魔されないで、伝えたかった。

 でも、後悔したところで、もう遅いから。


「付き合お」


 ポツリ。

 零れ落ちた言葉に、沈黙が流れた。
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