まことしやかな恋
支度を終えた嗣海と家を出て、駅までの道を肩が触れそうな距離で並んで歩く。
楓の赤、欅の褐色、銀杏の鮮やかな黄。秋の紅葉で色付く歩道を歩調を合わせて進み、ひらひらと舞うイチョウのシャワーを浴びた。
歩調は自然と揃っている。最寄りに同僚がいないのは把握しているからまだいいが、この光景をもし生徒に見つかったら一巻の終わりだ。
火のないところに煙は立たぬというが、学校は火がなくても煙が立ちやすい。根掘り葉掘り詮索される未来が容易に想像できてしまった。
「一緒に通勤してるとさ、大学で一緒に登校してたの思い出さない?」
ふと隣を歩く嗣海が懐かしむような発言をするから、私も遠くない思い出を引っ張り出してきて答える。
「あー、私たちが登校してる写真売られてたの思い出した」
「あはは、あったね〜」
「通学してるだけの写真が高値で取引されてて謎だった」
「俺は葵子の単体写真握り潰すのに苦労したけどね」
「は?」
「鈍すぎだよ」
足が一瞬、止まりかけた。
私の単体写真……? 嗣海の写真が売買されてたのは知ってるけど、私もなの?
てっきり、通学してる写真が売られていたのは嗣海が目当てだと思っていたんだけど、私の写真も取引されてたとなると話が違くなる。
「なんで?」
純粋な疑問を口に出せば、嗣海は心底呆れたように見下ろしてきた。
「27年生きてきて、自分の容姿と性格を正しく理解できてないの信じられないな」
馬鹿にされてるよね、これ。