まことしやかな恋
まあ、他の先生たちですら〝しばちゃん先生〟と呼んでくるから、半分諦めている。
「そうだ、しばちゃんさぁ〜」
鼻血を出した子の保健室来室記録を記入していると、付き添いの女子生徒らが巻いた髪の毛をくるんと指先で遊びながら隣に座ってきた。
紛うことなき、ギャルだ。一見、鼻血を出した大人しめの子とはタイプが合わなそうなのに、仲がいいらしい。色違いのヘアピンが彼女たちの髪に飾られている。
「運命の人とキスすると、身体にハートマークが浮かぶって噂、知ってる〜?」
「……いえ」
危うく、ペンを落としかけた。
仲良しの彼女たちを微笑ましく思っていたら、突如として落とされた大きめの爆弾。今の私には威力が強い。
表情にも態度にも出さず、私は知らないふりをした。
「え〜、見たことないの〜?」
「……ありません」
今朝のは、そう、
やたら形が綺麗な淡いピンク色の痣だ。
「ほら〜、みてこの写真! こんな感じでピンク色のハートマークが浮かぶらしいの!」
私の左胸にあったソレと酷似しているが、写真なんていくらでも加工できる。
「……ただの痣でしょう」
「違うよ〜! 痣はもっとぐろい色してんじゃん! これは恋の色って感じ!」
「恋の色……?」
恋? 恋……?