まことしやかな恋
女子生徒たちは、ちらちらと男子生徒と友人を見比べていた。ようは、アシストついでにしただけの話。
それでも、今の私には強烈な一撃だ。
体調不良の子と入れ替えるように、鼻血の止まった女子生徒が好奇心旺盛な友人と男子生徒を引き連れてクラスに戻る。
以降も、私情で仕事が疎かになることはなかったが、頭の片隅からソレは消えてくれなかった。
〈────20時、Polaris〉
昨日の今日で、バカなの?
帰る支度をしていれば、あろうことか二日酔いが回復したばかりの私を二言だけで呼び寄せる文言に苛立ちが募る。
とはいえ、今日は金曜日。行かないと誘いを跳ね除けたら、アイツのことだから「意識してるんだね」と笑顔で言い切るだろう。そんなの我慢ならない。
〈二日酔い。今日は飲まない〉
〈そんなに弱かったっけ? お詫びにマッサージしてあげる〉
〈いらない〉
〈遠慮しないで、予約しとくね〉
〈いらない〉
昔から変わらず、強引な男だ。
外堀を埋めるのも抜かりない。どこまで計算しているのか、マスターから〈今日のメニューは和風しらす明太子パスタです〉と連絡まで来た。食べに行くしかない。
事務仕事が残っていないか再確認し、保健室の電気を消して施錠した。校舎を出ると、西の空に残る残暑は雲の縁に溶けて光を失い始めている。
部活動に励む生徒たちと、薄紫に沈む空を背に、私は歩調を上げて駅へと向かった。