まことしやかな恋
「絆創膏、あげましたよね」
「あー?」
「生徒の怪我を放っておくのは職務放棄にあたるので手当てします」
そう告げて立ち上がり、彼の隣に椅子を引く。金属の脚が床を擦り、短く乾いた音を立てた。
首をぐらりと大袈裟に傾げた生徒は、私の対応に眉根を寄せる。試すような視線が突き刺さった。嗣海と異なる警戒心の強さは、野性味と表現するべきか。
「アンタ、お人好しだね」
「羽柴先生」
「しつけぇな〜」
呼び方を訂正すると、あからさまにうんざりとした顔を見せる生徒。私は敢えて無視を貫いて顔や手の甲の擦り傷、切り傷を丁寧に処置していく。放置するなと言ったのに。
完全に無視していれば、つまらなそうに目線を下げた生徒は、私が首からぶら下げでいる名札を手に取り、興味深そうに視線を滑らせる。
「……羽柴 葵子?」
「そうですが」
「ンじゃ、葵子ちゃんセンセーね」
「クソガキが」
「ハッ、やっと本性出た」
本性も何も、仕事もプライベートを使い分けてるだけだ。けど、弁明したところで「どうでもいい」と一蹴されるのは目に見えていたから口を閉じた。
「君の名前は」
「ンア? 鞍馬 大和」
「鞍馬くん。君を助けようとしたクラスメイトの彼にお礼は言いましたか?」
「は〜、元気で喧しいアイツな。朝、大丈夫かってしつけぇくらい心配してきたからアンタのこと聞き出した」
「そうですか」
そっぽを向いた彼はクソガキだが、きっと雑にお礼は言ったんだろう。
心配されたという言い方は、受け身の発言だ。