まことしやかな恋

 はあ、と小さくため息をついた。

 起こり得る処分を考えて気が遠くなる。懲戒免職、社会的制裁、民事賠償……首を括るしかなくなるのでは。

 想像の中で袋叩きにされ、散々に打ちのめされてる自分を見下ろし、私はあっさりと口を開いた。


「元ヤンではありません」


 諦めた表情から悟った鞍馬 大和は、満足気に口角を上げる。


「武道やってた? 親がヤベーとか?」

「いいえ、運動神経がよかっただけです。母親がスポーツ選手だったので、遺伝子的にも優れていたのかもしれません」

「は? もしかしてエリート家系?」

「否定はしません。恵まれた環境でした。両親ともに検索すればヒットするくらい有名です」


 どうにでもなれとばかりに自己開示していくと、彼は興味深そうに身を乗り出した。前傾姿勢のまま、目を丸くしている。

 事実、私は恵まれていた。

 両親の愛情を一身に受けて育ち、一人娘ということもあって蝶よ花よと甘やかされてきた。衣食住に困ったことも、将来に不安を抱いたこともない。

 世間から見れば、順風満帆というやつだろう。

 
「……え、で? なんでケンカ慣れしてんの?」


 大量の疑問符を頭上に乗せた彼の顔は、話の筋道がわからないと言っていた。

 私は軽く肺の中の空気を吐き出す。


「性格の悪い男と関わる前の、くだらない暇潰しです」


 あれは、嗣海と暇を潰すまでの、しょうもない遊びだった。
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