まことしやかな恋
説明するほどでもない。ごく単純な話だ。
「母の影響もあって中学の頃は陸上部に所属していました。毎日部活に励んでいたので、特に暇になることはなかったのですが、中学3年生で怪我をしました」
「……」
「アキレス腱断裂です。リハビリをして日常生活での支障はなくなりましたが、高校では陸上部を選択しませんでした。それで暇を持て余したので、喧嘩を見つけたら乱入する暇潰しをしていただけのことです」
「イヤ、後半の説明意味わかんねーよ。急に話の舵切りすぎだろ」
端的に事実に基づいた説明をしたのに、なにがわからなかったのだろうか。補足する情報もないので譜面通りに受け取ってもらいたい。
私を見て、鞍馬 大和は「イカれてる」と呟いた。
心外な。
「選手生命を絶たれてとかじゃねぇの?」
「全然ないですよ。母の影響で陸上をはじめましたが、才能はありませんでしたので、惰性でやっていました」
「自分に才能ないことにグレて?」
「早々に見切りをつけていたので、グレるとかはないです」
「……アンタ、変わってんな」
しみじみと発せられた声は、限りなく本心だった。
私は自身を変わり者だと思ったことはないが、他者からは理解し難いのだろう。
アキレス腱断裂は痛かったし、リハビリも面倒だった。
──けど、それだけ。
自分を哀れんだことはない。別段、どうとも思ってない。話したことが、事実としてそこにあるだけだ。
人は往々にして、他人の過去に物語を求めすぎる。