まことしやかな恋
本当に感傷がないと理解した鞍馬 大和がぐったりと背もたれに脱力する。天井を見上げて「聞かなきゃよかったわ」とぼやいた。
「マジで、大層な理由はねーわけね」
「ありません。暇潰しです」
「暇潰しで、ブランクあって、アレか〜……」
彼の反応で、嗣海に話したときのことを思い出す。
鞍馬 大和の感想とは正反対で、嗣海は最高だと腹を抱えて笑っていた。当たり前だけど、人の受け取り方は様々だ。
もう満足だろうと時計の針を確認し、残っているお弁当を食べるため椅子から立ち上がる。元の席に戻ろうとすれば、不意に腕を強く掴まれた。
「……まだ、なにか?」
抑揚なく問いかけると、俯いていた顔がゆっくりと上げられる。
首元の絆創膏が、妙に目立っていた。
「新しい暇潰しの性悪って、会えないとそこそこ恋しい相手?」
「……」
彼の発言に、なんで知っているんだと眉をひそめたが、お酒が抜けた今、記憶はあっさりと蘇る。
──「……先生は、今から、会えないとそこそこ恋しい相手に会いに行くので。さようなら」
うん。こんなこと、言ったな。
後悔の念にかられる私を、鞍馬 大和は楽しげに見つめて笑う。
「付き合ってんの?」
「……」
「俺と付き合おーよ」
「丁重にお断りします」
未成年のお遊びに付き合ってられるか。
呆れて腕を振りほどこうとしたが、それよりも先に彼の方が手を離した。
指先が、首筋の絆創膏を剥がす。
「──俺とアンタ、運命なのに?」
憎たらしいハートマークが、微笑んでいた。