まことしやかな恋

 淡いピンク色のハートマークに、思考も息も完全に止まった。瞠目したまま固まっていれば、上目遣いで再び腕を掴まれる。


「昨日、アンタとハプニングでキスした後、こんなん出てきてさ、調べたら運命らしいじゃん?」

「……他の人とキスして現れたものを、私と言い張ってるだけでは」

「ハハ、ウゼ〜。逃避やめたら?」

「……」


 言い返したいが、思考が追いつかない。

 自分のものも含めて、私は既に二回もこのハートマークを見ているのだ。だからこそ、鞍馬 大和の首に刻まれた運命が偽物でないとわかる。

 でも、相手が私ではない可能性は捨てきれない。喧嘩の後に彼がどんな行動をしたのか、私はなにひとつ知らないのだから。

 静かに呼吸を再開させる。自身のハートマークを思い出し、心の中でそっと撫でた。

 私の運命は、彼ではない。


「何が目的ですか?」


 渦巻いていた動揺を押し込めて問う。

 酷く楽し気に笑っている彼が腕を引っ張ってきたが、昨日の二の舞だけは避けようと踏ん張って耐えた。

 思い通りにいかなかった鞍馬 大和は、途端に不満そうな顔を表に出す。


「なぁ、アンタの身体にもハートマークあったりして」

「……ありません」


 咄嗟に嘘をついた。

 鞍馬 大和は鼻で笑い、白けたように視線を外に投げた。それでも腕を離さない。

 最初から、まことしやかな運命の話をする気だったとして、最終的に彼の求めるものは何だろう?

 私へと、視線が戻る。不敵に口端を上げた彼は、案の定ろくでもない条件を突きつけてきた。


「ヤるか、連絡先よこすか」

「……」

「葵子センセーが選んでいいぜ」


 呆れる二択だ。大きなため息が零れた。
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