まことしやかな恋

 私にリスクしかない選択肢を用意するあたり、彼も不良だ。天秤にかけさせるどころか、一択しかないような提案。前者は候補にすら入らないとして、後者もバレたら首が飛ぶ。

 大人の矜恃で舌打ちを我慢し、ポケットの中にあったスマホを取り出して無言で連絡先を渡した。


「返信しろよ」

「先生には敬語を使ってください」

「ハハ、ヤダ」


 終始、言うことを聞かない鞍馬 大和は生意気な態度を崩さずに「ンべ」と舌を出す。

 呆れつつも掴まれていた腕を上に持ち上げれば、今度は拍子抜けするほどあっさり振りほどけた。

 使用した備品を手際よく片付け、食べ損ねていたお弁当の残りを食べようと箸を持つ。人の食事を見届けるつもりはないようで、彼は気怠げに立ち上がった。


「────鞍馬 大和くん」


 世界に飽き飽きしているような背中を呼び止める。

 振り返った彼は、真っ黒な瞳を向けてきた。


「昨日、ナイスファイトでした」

「……は、……?」

「私からは二点。怪我に気をつけて。制服で喧嘩は通報されます」

「……」

「以上です」


 理解不能だと言いたげな視線を無視し、黙々と食べ進める。


「アンタ、マジで変でイカれてる」


 去り際、鞍馬 大和はそんな言葉を置いていった。
 
 お弁当は冷めていても、美味しかった。
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