まことしやかな恋
˚‧ 𓆸
ブォー、と温かい風が吹く。
私は昨日と同じように嗣海の足の間にすっぽりと身体を収め、猫っ毛の髪をドライヤーで丁寧に乾かされていた。
「眠い?」
「ん〜……」
心地良さにまぶたが閉じていく。
頬を擽るように撫でてくる手を捕まえて、コテンと自分の頬置きにしてみると、頭上から嬉しそうな声が降り掛かった。
「そんな可愛い技、どこで覚えたきたの」
「わざとらしく甘えるときの嗣海」
「俺なんだ」
学びは近くにあるものだ。
人を誑かして、惑わせて、暇潰しにしていた性悪は、手っ取り早くお金を貯めるため、一年だけホストをしていた。近くにいた私が影響されるのもごく自然なこと。
一歩も動きたくない私を、嗣海はベッドまで運んでくれる。隣に寝転ぶ大きな抱き枕に擦り寄れば、なにやら上機嫌で喜んでいた。
部屋の明かりが落とされ、暗くなる。
「仕事から帰ったら、俺の部屋で葵子がご飯作って待っててくれて浮かれちゃった」
「合鍵使えって言ったじゃん」
「葵子はスルーして自分の家に帰りそうだから」
「一応、付き合いたてだし」
「付き合いたてじゃなくてもやってね」
合鍵を使用して嗣海の部屋に来たが、帰宅は私の方が早かったので、夕食を作って待っていた。
手の込んでない有り合わせのメニューになぜか嗣海はご満悦で、にまにまと喜色を滲ませる顔を見て私も嬉しくなったのは、ここだけの話。