まことしやかな恋

 ˚‧ 𓆸

 ブォー、と温かい風が吹く。

 私は昨日と同じように嗣海の足の間にすっぽりと身体を収め、猫っ毛の髪をドライヤーで丁寧に乾かされていた。


「眠い?」

「ん〜……」


 心地良さにまぶたが閉じていく。

 頬を擽るように撫でてくる手を捕まえて、コテンと自分の頬置きにしてみると、頭上から嬉しそうな声が降り掛かった。


「そんな可愛い技、どこで覚えたきたの」

「わざとらしく甘えるときの嗣海」

「俺なんだ」


 学びは近くにあるものだ。

 人を誑かして、惑わせて、暇潰しにしていた性悪は、手っ取り早くお金を貯めるため、一年だけホストをしていた。近くにいた私が影響されるのもごく自然なこと。

 一歩も動きたくない私を、嗣海はベッドまで運んでくれる。隣に寝転ぶ大きな抱き枕に擦り寄れば、なにやら上機嫌で喜んでいた。

 部屋の明かりが落とされ、暗くなる。


「仕事から帰ったら、俺の部屋で葵子がご飯作って待っててくれて浮かれちゃった」

「合鍵使えって言ったじゃん」

「葵子はスルーして自分の家に帰りそうだから」

「一応、付き合いたてだし」

「付き合いたてじゃなくてもやってね」


 合鍵を使用して嗣海の部屋に来たが、帰宅は私の方が早かったので、夕食を作って待っていた。

 手の込んでない有り合わせのメニューになぜか嗣海はご満悦で、にまにまと喜色を滲ませる顔を見て私も嬉しくなったのは、ここだけの話。
< 77 / 135 >

この作品をシェア

pagetop