まことしやかな恋
微睡みに揺られながら、とりとめのない出来事を寝落ちるまで互いにぽつぽつと話す。
「お弁当美味しかった」「校舎の裏庭に野良猫がよく来るらしい」「記述模試の結果がよかった生徒が報告に来たからジュース奢った」……私の方が口数が多くて、嗣海は柔らかい音色で頷くばかり。
だけど、それも心地がいい。
穏やかな日常だけを選んで、嗣海に話した。
「もう、ねむい。つぐみはなにかないの」
「あるよ」
「明日も明後日も合鍵使って」
「うん……」
「面倒なら越してきてもいいよ」
「ん〜、ん……?」
素通りできない言葉に、適当に打っていた相槌が止まる。
さりげなく引っ越しさせようとしている嗣海の思惑を探ろうと目を開け、朝の発言を思い出した。
──「俺の家に来てくれたら、いつでも食べたいもの作ってあげるよ」
あ、そういうこと?
同棲したいのか、と漸く気付いた私に、嗣海は苦笑いを浮かべて、気恥ずかしそうに視線を逸らした。意気地なしめ。
とはいえ、簡単には決められない。一緒に住むこと自体に抵抗はないが……マンションの更新は来年だし落ち着いて悩もう。
ぷにっと嗣海の頬を抓ると、照れくさそうな顔を誤魔化すように私の手を掴み、美しいかんばせを寄せてきた。
どちらともなく目を瞑り、唇が重なる。
「ねぇ、再来週の週末空けといて」
「出掛けるの?」
「うん、デートしよ」
いいよ。
──は、音にならず。
おやすみのキスの前に静かに溶けていった。