まことしやかな恋
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外界から切り離されたような店内は、マスターの好みで統一されている。家具も音楽もお酒も、すべてにこだわりが詰まっていて心地良い。
カウンターの端を陣取り、提供されたパスタをくるくるとフォークで巻いて口に運んだ。お酒に合う濃い味付けで癖になる。今日は流石にノンアルだけど。
「はぁ〜美味しい……」
ぽろりと零れ落ちた言葉に、色素を抜いたシルバーブロンドの髪を揺らすマスターが「口に合ってよかった」と微笑んだ。
「今日、お昼ご飯しか食べてなくて」
「おかわりもあるよ」
「ううん。マスターの料理を私が独り占めしたら他の常連に恨まれる」
有難いお言葉だが、ここの料理はマスターが気分で常連に提供してくれている。独占しては顔見知りの常連たちが文句行ってくるだろう。想像のつく面倒事は避ける塩梅だ。
「お酒飲みたくなる」
「ふふ、今日は控えるんじゃなかった?」
「そうだった……」
くすりと微笑するマスターの指先、黒のネイルが薄暗い店内で蠱惑的に見え隠れする。どうにも感情を見透かされてる気がして、視線を落とした。
マスターの笑みに含みがあると感じてしまうのは、自分の失態を自覚してるから。昨日、私とアイツは飲みすぎて、このバーで、顔見知りだらけの面前で愚かなことにキスをしたのだ。
「まさか、嗣海くんとキスするとはね」
「……嫌がらせ?」
「そんなつもりはないよ。仲が良くて何より」
「最悪、面白がってる」
話題に出すあたり、マスターは愉快犯。