まことしやかな恋
˚‧ 𓆸
街路樹が風に揺れるたび、色づいた葉がひらひらと石畳に舞い落ちる。
瑞々しく澄んだ水色の空を仰ぎ、腕時計に視線を落とした。
「(……着くの、はやかったな……)」
洗練された商業施設が立ち並ぶ通りには、休日らしい人の波が絶えない。季節を先取りした冬物が並ぶショーウィンドウの前で、行き交う人々の横顔を眺める。
腕時計の針は到着して既に10分ほど時を刻んでいた。それでも待ち合わせの時間には早いのだから、自分の浮かれ具合に苦笑してしまう。
ショーウィンドウに反射する自分の姿をちらりと一瞥した。
アイボリーのブラウスに合わせた、深いネイビーのロングスカートが揺れる。軽やかなウール地のチェスターコートを羽織ったクラシカルな装いは華美に走らず、年相応の品を纏っていた。
我ながら、今日は見栄えがいい。気の所為じゃないと言い切れるくらいに好意的な視線を集めている。
しかし、気分はあることをきっかけに急激に下降していった。
「お姉さんひとり? 暇なら話さない?」
「……」
「え、無視? ひど~」
邪魔にならないように端に身を寄せて嗣海を待っていたのだが、ベタなナンパをされて無視しようにも退いてくれない。
極力、視界に入れないように顔を背けるも、ナンパ男は執拗いくらいに話しかけてきた。
「もう10分もいんじゃん。待ちぼうけ食らってんでしょ? 俺と遊ぼうよ」
……きもいな、コイツ。