まことしやかな恋
私が到着してからずっと見ていたという旨の発言に眉が寄る。待ちぼうけも否定したい。私が早く来ただけのことだ。
小さな苛立ちを燃料に、私はゆっくりと男の方へ視線を向けた。目が合った途端、値踏みするようにニヤつく浅い男を真正面から見据える。
「っ、な、なに、じっと見つめて……あ、俺がタイプだったとか?」
「私のタイプは、地の底まで性格が悪くて優等生面してる腐れ縁の男なので。あなたは眼中にありません。さようなら」
「は? なんだよ、それ……っ」
抑揚のない声で告げると、男は気勢を削がれたように口ごもる。けど退く気配はなく、所在なさげに留まっているから往生際が悪い。
呆れて人の波に視線を泳がせたとき、まるで全てが計算通りと言いたげな、悠然と歩いてくる男を見つけた。
ふっ、と口角を緩める。
「私の恋人は、とことん性格が悪いのでさっさと退散した方が身のためですよ」
誘惑するように、こてんと小首を傾げた。
麗しく、魅力的な男が、当たり前のように私の隣にやってきて腰を抱く。
「お待たせ。性格の悪い男って誰かな?」
「あなたですけど」
「へえ、いい男の趣味してるね」
悠然と微笑む男を、嘘をつけと睨む。
この男、私が絡まれるのを絶対どこかで見てた。タイミングが良すぎる。
「君は俺の恋人を口説こうとしてたのかな?」
「……っ」
「俺がいるから無理だよ、諦めてね」
圧倒的に優れた自身のルックスを存分に使って牽制する嗣海の涼しい圧に、ナンパ男はたじろいだ。
相手が悪すぎる。ちょっと可哀想だな。