まことしやかな恋
絆されている自覚があるけど、この男に絆されてるならいいかと、諦めに似た感情が答えな気がした。
「俺が気を引こうとして、繋いだ手ぎゅってしてたの気づいてた?」
「気づいてなかったって言ったら拗ねるでしょ」
「もう拗ねてますよ~」
私の気を引きたくて頑張っていたらしい嗣海が、わかりやすくそっぽを向いて拗ねる。気を引きたいとか拗ねてるとか、自己申告するあたりも狡い。私には効果覿面だ。
「最後、奥の写真だけ。気になるから見たい」
「いいよ」
手を引っ張って、奥に向かう。
ほとんどの人が写真に焦点を合わせてるけど、何故か私たちは静かに盗み見されていた。人前でイチャついてるバカップルだと思われてたらどうしよう。居た堪れない。
奥にあるスポットライトに照らされた一枚の写真の前で足を止めた。街灯に照らされた舗道に、誰かの影だけが伸びている。
この写真だけ、女の人だ。
「気に入ったの?」
「なんか、なんだろう。撮った人の感情がここまで出てるの珍しいなって……」
「そうかもね」
数分、立ち尽くしたまま、写真を眺めた。
パチン、と急に魔法がとける感覚。隣にいる嗣海を見上げると、写真ではなく私を見つめていたようで目が合った。
「もういいの?」
「うん」
出口の近くにあった物販でポストカードと簡易冊子の作品集を購入する。
思いがけない、いい出会いだった。