まことしやかな恋
店内に入った途端、外の喧騒が嘘のように消えた。
空調の温度が一段階下がったような、凛とした静けさ。大理石の床をヒールの音が響かないよう、無意識に足運びが慎重になる。借りてきた猫状態の自分。方や、嗣海は慣れた様子で店員と言葉を交わしていた。
「葵子、おいで」
おいで、と言われなくとも、手を繋いでいるんだから離れられない。
無言で寄り添い、ガラスのショーケースを見下ろした。透明なケースの内側に、上等なジュエリーが並べられている。白い布地の上に一点ずつ間隔を置かれ、内部に配置されたスポットライトに正確に照らされていた。
リングやネックレス、ブレスレット。金属の光沢と石の屈折が重なり、微細なきらめきが呼吸するように揺れている。
「ふふ、困り顔かわいい」
「やめて」
人目を気にしない甘ったるい声に、動じないと強い意思を持って言葉を返した。
ご機嫌な嗣海が可愛いの大盤振る舞いをしてることに気づいていたけど、今だけは愛でないでほしい。私はこの手の羞恥心にも慣れてないのだ。
「……これ? デザインが好き?」
逃げるようにジュエリーを眺めていれば、目敏い男に見つかってしまった。
小粒の一粒石をあしらったピアス。
自分にも、嗣海にも、似合う気がして、ふと他のものより長く眺めてしまったのだ。
「(イエローダイヤモンドと、ロイヤルブルーのサファイア……)」
私たちっぽい色。