まことしやかな恋
腐れ縁のお陰で、お互いが好む色を把握してる。デザインも気に入ったが、宝石の色も含めてつい注視してしまった。
気軽に買える値段じゃないのに。
「このピアス、近くで見せてもらえますか?」
「えっ」
「かしこまりました。宝石のお色味は、こちらでよろしいでしょうか?」
「はい」
「え、ま……っ」
なんて、呑気に構えていたのが悪かった。
嗣海の言葉に応じ、店員は白手袋の手でトレーを持ち上げる。カウンターの上へ静かに移すと、その上にピアスをそっと並べた。
「こちらはイエローダイヤモンドをあしらったピアスでございます。ファンシーイエローの中でも彩度が高く、クラリティも良好なものを選定しております」
「……はい」
「もう一方は、ロイヤルブルーのサファイアでございます。発色が均一で、光源によって青の深さが変化するのが特徴です。いずれも日常使いでも華美になりすぎず、耳元に程よい華やかさを添えてくれます」
カラット数なんかも説明されたが、全然頭に入ってこない。
予想してない展開だ。止めようにも、嗣海が謎に乗り気で、私は完全に置いてけぼり。視線の先にいる宝石の輝きに焦りことしかできない。
サファイアは静かな深さを保ったまま光を溜め、ダイヤモンドは粒の内部で細かく反射を繰り返していた。
買う前提で話がとんとん進んでいく。どうにでもなれと現実逃避していれば、急に麗しい顔が眼前に滑り込んできた。
「っ、なに」
「葵子の色、俺に頂戴?」
「……は?」
「俺の色、貰ってね」
蠱惑的な甘さに、思考が溶ける。
一言も発せられない私を見て、くつりと狡猾に笑う男は結局ピアスを両方買ってしまった。