まことしやかな恋
怒涛の展開に、ジュエリーショップを出た記憶も曖昧になるほど放心状態。上機嫌な恋人の言動がいよいよ怖くなってきた。よく知ったはずの男なのに、恋人になってから知らない顔ばかり見せてくる。
「ぽけっとしてる顔も可愛い」
「馬鹿。可愛いで全部が丸く収まると思わないで。なにがどうなって三桁のピアスを買うことに……」
「俺が買ったから、葵子は損してないよ?」
「それはそうだけど、そういう話じゃなくてさ」
「どうしたの? そんな繊細な性格してたの?」
「……」
このっ、この野郎……。
私を振り回して楽しんでる男を、キッと睨んだ。お店で狼狽してる姿も、楽しんで見守られていたかと思うとむかつく。
「まさか、嗣海って恋人に貢ぐタイプ?」
「ん? 別に。葵子には貢いでもいいかなって思ってるけど……なにか欲しいものある?」
「ない」
話の流れが怖い。気軽に買い与えようとしないで。
ふらふらと歩いてるうちに、ブティックが並ぶ商業施設の通りを抜け、敷地の広い公園へと辿り着いた。
密集した賑わいを離れて落ち着いた場所に移動したはいいものの、まだ衝撃は収まっていない。踏みしめるたびに橙や褐色の乾いた葉がかさりと音を立てる道を歩き、広場の一角に並ぶベンチに腰を下ろした。
「そこのカフェで珈琲買ってくるね」
「……ん」
「休んでて」
後ろ姿さえも絵になる長身を、ベンチに座って見送り、脱力する。
「(デート、楽しいな。ピアスは予想外だったけど、嬉しかったし。このまま平和に過ごせたら──)」
脳裏に過ぎる、ひとつの懸念。
彼が、諦めて、来ないでくれたらいいんだけど。
……運命は、思い通りに私を翻弄する。
「──センセ、デート楽しんでる?」
現れた影に、ため息が零れた。