まことしやかな恋
のろのろと視線を上げれば、鞍馬 大和が気怠げに私服のポケットに手を突っ込んで立っていた。
全身黒づくめで大きめのジップアップーパーカーを着ている鞍馬 大和は、穏やかな時間が流れる公園に似つかわしくない嘲笑と態度で私のことを見下ろしている。
首元の絆創膏が嫌に目立っていた。
「用件は?」
「アー? アンタに散々無視されてイラついたから鬱憤を晴らしにデートの邪魔しに来た。会いに来られたら無視できねぇだろ?」
「無視するのが難しい状況ではあります」
「はは、返しつまんね」
彼の背後で、秋の風に煽られた落ち葉が舞う。
僅かに視線を上げた鞍馬大和が、私の背後を見据えたまま「あれか、性格悪いアンタの恋人」と意味ありげに口にした。
私の背後、私と対面する彼の視線の先に、嗣海はいるはず。
見えないのが、もどかしい。
「無視された腹いせに実力行使で接触しようとしてくる行動力、別のところで発揮できませんか」
「ムリ。なぁ、俺とアンタがキスしたこと性格の悪い恋人サンは知ってんの?」
「いえ」
「運命なのも?」
「……」
ニヒルな笑みを携えて、鞍馬 大和は信じてないくせに運命という暇潰しの遊び道具の言葉を利用する。
幾度となく紡がれてきた運命。
気まぐれに人を惑わすまことしやかな運命も、運命に事欠いて向き合うことから逃げる人も、愚かで滑稽だ。
もう、うんざり。
聞き飽きたと辟易した私は、都合よく解釈されるとわかっていたけど、沈黙を返した。