まことしやかな恋

 ぬるくなってきた珈琲を飲み干す。辺りが薄暗くなるのに比例して、公園内にいた人の気配もぽつぽつと減り、街路灯が灯った。

 再び二人きりの時間ができてしまった私は、つまらなそうに息を吐き出した鞍馬 大和と向かい合う。

 夜に溶け込むような黒髪を揺らす彼は、生気を欠いた白い肌に痣や傷を滲ませ、無機質な瞳を遠くに投げていた。


「運命を、信じていますか?」


 憂うような横顔に問いかける。

 風に吹かれた彼は、口の端に冷ややかな感情をぶら下げ、静かに吐き捨てた。


「信じたことねぇよ」


 運命を引き合いに、人を掻き乱した人間が、まるで信じてないと言う。嫌悪を帯びた音色が秋の夜に漂った。

 以降、鞍馬 大和は口を横に引き結んで対話する意思をみせなかった。近づくことも、遠ざかることもなく、一定の距離を保ったまま、時間が経過する。

 そして、不意に振動したスマホが、想定外の出来事を知らせた。


〈急にすみません。雨さんから連絡来て、ディナーの予約をキャンセルするの勿体ないからって譲られたんですけど、今日ってデートの日でしたよね? 何かトラブル起きてます? 通話中の様子も変だったんで気になって〉


 頭がまっしろになる。


「──……は?」


 低い一音が、自分の口から零れた。

 意味がわからない。立ち上がって周辺を見渡すも人の気配がなく、気が動転しそうになる。

 逸る気持ちをどうにか抑え込んで通話をかけた。けれど、繋がらない。何度掛けても無視されて、既読も付かない。
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