まことしやかな恋
茫然自失で、へたりとベンチに座り込んだ。
通話するフリして、逃げ帰ったってこと? それとも、この場から逃げ出せる口実を得て、そのまま消えた? なんで。どうして。ちゃんと話すって、待ってるって言ったのに……。
鞍馬 大和は胡乱な視線を寄越したが、私の焦った姿と今の虚ろな表情で察しがついたのだろう。バカにしたように鼻で笑う。
「あんだけスカしといて逃げんのダセー」
「……」
「アンタもクソ迂闊。俺にスマホ覗き見されるような隙があっから、こうやってデート邪魔された挙句、置き去りにされんだよ」
事の元凶ともいえる存在の揶揄するような言葉に俯いていた顔を上げた。怒りたいわけじゃない。私が計画を見誤った。
「わざと」
夜の密度が増した公園に、私の諦念の声が沈む。
満ちた空が月を背後に「……ハァ?」と鞍馬 大和は不審な声を漏らんだ。言葉の意図を掴み損ねている。
私は小さく息を吐いて、破綻した無様な計画の全貌を渦中の彼に語ることにした。
「君にスマホを覗かせて、デートの日時と場所を把握させました。邪魔しに来たら、恋人に説明する手間を省けるし、面倒事にピリオドを打つ、いい機会になると思ったんです」
「……は、」
「うちの性悪は、幸せな時間にひっそりと消えてしまうような、終わりばかりを想像する臆病な根暗です。君の存在に気づいていたのに、私に問い詰めることもできない。潜在的な憂鬱を抱えたまま過ごします。終わりが、怖いから」
「……だから、鉢合わせてやろうって?」
「はい。目の前で解決すれば、安心するかと思って」
いちばん、確実な方法を、取ったつもりだった。