Oh! My リトルマーメイド
阿海(アハイ)! あんたの福の子が見つかったわよ! 素敵な女性になってた! 画像を送るわね』
 母親からのメッセージの後には、くつろいだ表情で微笑むショートカットの女性の画像が送られてきた。
 見るつもりはなかったが、つい目がいってしまいスクロールする指が止まる。
 猫を思わせる涼し気な目元に通った鼻筋。口は小造りなので全体的に冷たい印象があるが、笑うと目元が垂れて柔らかくて優しい顔になる。
 記憶の中にある笑顔と同じだった。
 ただ唯一違うのは、世海の福の子は長く波打つ綺麗な黒髪の持ち主だったが、画像の女性の髪は耳よりも短い。
 キツめな顔つきと相まって、これでは男に間違えられてばかりだろうな、と世海は冷めた目でスマホを見下ろした。
「エリック、それ誰? すごくカッコいい人ね」
 思ってたよりもスマホを凝視していたらしい。ヘアメイクの女性の言葉にはっとして、世海は見入っていたスマホをそっと伏せた。
「さあ、母親が勝手に送ってきたんだ」
「ふーん。エリックの親戚の人? やっぱりイケメンて家系なのね」
 なんとも答えようがないので、世海はあいまいに笑って肩を竦める。
「エリック。スタンバイいいか?」
 控室のドアを開けて、マネージャーが声をかけてくる。
 セットもちょうど終わったらしく、ヘアメイクの女性は鏡越しに世海に頷いた。
 こちらも鏡に向かって頷き返して、世海は席を立ち、ドアに向かう。
 手に持ったスマホの画面には、福の子の画像が消えずに微笑みかけていた。
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