Oh! My リトルマーメイド
「は? 台湾?」
昨日と同じ居酒屋。ビールを飲む手を止め、田辺雄一はポカンと口を開けた。
「ずいぶん急だな」
「うん、グロンブル台湾の日本人スタッフに欠員ができるから、至急交代要員を送って欲しいんだって」
マグロの刺身に丁寧に紫蘇を巻き、海帆はそれをゆっくりと口に運ぶ。
「欠員の理由は? 妊娠か?」
直接すぎる言い方を咎めるように睨み付けるが、雄一はどこ吹く風とビールを煽る。
「なんなんだろうなー。日本じゃそうでもないのに、海外行った途端にゆるくなるの。ほんと不思議だよ」
「その人はもともと台湾の人と結婚してたの。だからおめでたい話しじゃない」
「少し無責任じゃないか」
夫婦に子供ができることに無責任なことがあるだろうか。その人は妊娠に気付いてすぐに職場に報告し、グロンブル台湾は引き継ぎ期間を含めた人員要請をしてきたのだ。きちんと段階を踏んだ対応をしている。
そう反論すると、雄一は肩をすくめるだけだった。
「どのくらい行くの?」
「未定。とりあえず二、三年で考えて欲しいって」
「二、三年かあ。遠距離だな」
「うん……」
返事をする声が小さくなる。
雄一はル・グロンブルホテルの管理営業部に所属していて、海帆とは四年付き合っている。
結婚の話しは出てないが、お互いそろそろかなと意識はしていた。交際は順調。互いの性格や長所短所も理解している。そこにきて海を隔てた遠距離恋愛が振りかかるとは。
「ま、ちょうどいいかもな。結婚は三十になってからって考えてたし」
「そうなの?」
「うん。今はこき使われてるけど、俺も二年くらいしたらもう少し偉くなるだろうから。そうなってからって考えてた」
ちょっと待て。これってプロポーズか? 居酒屋で?
内心慌てている海帆に気付く様子もなく、雄一はサワラの塩焼きをパクつく。
「行ってこいよ。つか、その様子じゃ行く気満々だな。そうだろ?」
「うん、まあ」
「浮気の心配はまずないのが救いかな。向こうの男どもを圧倒してやれ」
「何それ」
頬杖をついて、精一杯の男前な顔で睨むと、雄一は真顔で言った。
「彼女だけは作るなよ」
昨日と同じ居酒屋。ビールを飲む手を止め、田辺雄一はポカンと口を開けた。
「ずいぶん急だな」
「うん、グロンブル台湾の日本人スタッフに欠員ができるから、至急交代要員を送って欲しいんだって」
マグロの刺身に丁寧に紫蘇を巻き、海帆はそれをゆっくりと口に運ぶ。
「欠員の理由は? 妊娠か?」
直接すぎる言い方を咎めるように睨み付けるが、雄一はどこ吹く風とビールを煽る。
「なんなんだろうなー。日本じゃそうでもないのに、海外行った途端にゆるくなるの。ほんと不思議だよ」
「その人はもともと台湾の人と結婚してたの。だからおめでたい話しじゃない」
「少し無責任じゃないか」
夫婦に子供ができることに無責任なことがあるだろうか。その人は妊娠に気付いてすぐに職場に報告し、グロンブル台湾は引き継ぎ期間を含めた人員要請をしてきたのだ。きちんと段階を踏んだ対応をしている。
そう反論すると、雄一は肩をすくめるだけだった。
「どのくらい行くの?」
「未定。とりあえず二、三年で考えて欲しいって」
「二、三年かあ。遠距離だな」
「うん……」
返事をする声が小さくなる。
雄一はル・グロンブルホテルの管理営業部に所属していて、海帆とは四年付き合っている。
結婚の話しは出てないが、お互いそろそろかなと意識はしていた。交際は順調。互いの性格や長所短所も理解している。そこにきて海を隔てた遠距離恋愛が振りかかるとは。
「ま、ちょうどいいかもな。結婚は三十になってからって考えてたし」
「そうなの?」
「うん。今はこき使われてるけど、俺も二年くらいしたらもう少し偉くなるだろうから。そうなってからって考えてた」
ちょっと待て。これってプロポーズか? 居酒屋で?
内心慌てている海帆に気付く様子もなく、雄一はサワラの塩焼きをパクつく。
「行ってこいよ。つか、その様子じゃ行く気満々だな。そうだろ?」
「うん、まあ」
「浮気の心配はまずないのが救いかな。向こうの男どもを圧倒してやれ」
「何それ」
頬杖をついて、精一杯の男前な顔で睨むと、雄一は真顔で言った。
「彼女だけは作るなよ」