第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
*** 

 アローフォワード社長室。水無瀬澄春は無表情でパソコンの画面を眺めている。

 表示されているのは、ベストマリアージュの登録画面だ。

【あなたが最も結婚相手に求めること】

 澄春の目は何にも興味を持っていないかのように、冷え切っている。

 特になしと記入すると、NGとして弾かれた。

 無記入が許されない回答なことを忘れていた。仕方なく次点[悠森13][RY14]を回答した。

【平穏】

 結婚相手に求めることなど、特にない。自分の邪魔をせず、ただ静かにしてくれていればいい。

 全ての登録を終えて結果を待っていると、社長秘書の大沢正樹(おおさわまさき)がやってきた。

 彼は澄春の子供時代からの友人で、共にアローフォワードを立ち上げた設立メンバーでもある。

 正樹は澄春に目を向けると、僅かに眉を顰めた。

「本当に登録したのか? なにも自らテストする必要はないだろ。それとも結婚したくなったのか?」

 正樹は手にしていたファイルを机に置き、澄春の画面をのぞき込んだ。

「自分で確かめる必要がある」

 ベストマリアージュで使われているアルゴリズムは、澄春の手によるものなのだ。身を持って成果を確認するのが開発者の責任というものだと澄春は思っている。

「マッチングした相手と、本気で結婚するつもりか?」
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