第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「気づかないはずない。君が対応している間、側で待っていたじゃないか」
「あ、たしかに」

 千咲が千円を渡し終えると、近くで澄春が腕を組んで待っていた。退屈そうな顔をしていたから、待たせてしまったとひやひやしたのだった。

「俺だけじゃない。ほとんどの人が気づいていた。そのうえで近寄らなかったんだ」
「無視したってことですか? ……世知辛い世の中ですね」

 なんだか寂しくなってしまう。

「全員が冷たいからじゃない。詐欺などに遭わないように用心しているんだ。今は物騒なニュースが多いから」
「詐欺?」

 千咲はそんなことは考えてもいなかった。

「澄春さんもそう思ってたんですか?」
「俺はあまり関心がなかったけど、可能性はあると思った。だから千咲が躊躇いなく話しを聞きに行ったのを見て驚いた」
「驚いた? 全然そんな素振りなかったですけど」

 千咲を待っていたときの彼の顔は、見事なほどの無表情だった。

「今時こんな無防備でお人よしな人間がいるのかと、驚いていた」

 驚いたと二度も言われてしまった。千咲はなんだか恥ずかしくなって頬を膨らませる。

「それなら止めてくれたらよかったのに!」
「なぜ? 善行を止める必要はないだろ」
「詐欺だと思ったんじゃないんですか?」
< 105 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop