第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「どうでしょうか」

(なんだか……澄春さんの雰囲気が変わった気が……)

 いつもよりも確実に口数が多いし、千咲を見つめる目に興味の光が宿っている。

 この変化はなんだろうか。

「千咲はどうすれば、慣れるんだ?」
「……時間が経てば」

 なんだかいつも以上にドキドキする。澄春との距離が近いからかもしれない。

「これからは、もっと夫婦らしくしたい。敬語はなしで」
「はい」
「今日は外部にも夫婦であると公表したんだ。もう遠慮はいらないな」
「そ、そうですよね」
「同意してくれるならよかった」
「よかった? なにがですか?」

 千咲が戸惑うのと同時に、澄春がそっと膝を突いた。

 視線が同じ高さになる。彼の冷たくも整った顔を目前にして、千咲は思わず息を飲んだ。

 心臓がどくどくと音を立てはじめる。

「あの……澄春さん」

 空気が張り詰めはじめる。でもそれは彼を恐れていたときのような緊張ではなく、これから起きることへの期待を含んだものだ。

 澄春の手が千咲の頭をそっと抑える。彼が目を細めながら顔を近づけてくるのに気づき、千咲は咄嗟に目を閉じた。

 ひんやりした唇が触れ合い、千咲の胸がきゅっと締め付けられた。

 緊張で固まった体を澄春が、抱きしめる。

「千咲、早く慣れてくれ」

 やけに色っぽい掠れた声が耳をくすぐる。

 澄春がこんなことをするなんて思ってもいなかった千咲は、動揺しながら彼の腕の中に納まっていた。[直荒85][悠森86]

 甘く切ない感情がこみ上げる。

「はい……」

 千咲は素直に頷くと、彼の背中を抱きしめ返したのだった。

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