第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 仕方なく答えると、凛華がくるりと背中を向ける。千咲は重い気持で彼女の後を追った。

 凛華が向かったのは、開発設計部があるフロア近くの応接室だった。

 プレートを使用中に変えてドアを閉めると、凛華は腕を組み千咲を見据えた。

「ここなら邪魔が入らないわ。座って」

 立ち話で済ませたかったが、許されないらしい。千咲はしぶしぶソファに腰を下ろした。

「あの、お話ってなんでしょうか?」

 凛華が鼻で笑う。

「もちろん澄春のことよ。他になにがあったよ」

(たしかに。でもそんな言い方しなくてもいいのに)

 千咲は思わず眉を顰めた。

「今日はあなたに現実を教えてあげるわ」
「現実?」
「あなたは思いがけない幸運で澄春と結婚できたけど、彼の家……水無瀬家からは認められていないのよ」
「どういうことですか?」

 澄春は両親を亡くし兄弟もいないと言っていた。

(親族の話をしているのかな?)

 千咲の戸惑いをよそに、凛華が続ける。

「水無瀬家は老舗医療機器メーカの創業家よ。現在の当主は澄春の叔父で、従姉は代議士に嫁いで今は文部科学大臣の妻よ。他の親族も官僚となったり、とにかく皆一線で活躍しているわ」

 千咲は驚愕しながら凛華の話を聞いていた。

(そんなすごい家だったなんて)
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