第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
一月半ばの金曜日。千咲は澄春の親戚との顔合わせのために、都内の料亭を訪れていた。
都心にありながら見事な日本庭園を持つ日本家屋だ。
縁側付きの個室に、繊細な会席料理が順々に運ばれてくる。
婚約者の親族との初顔合わせなのだ。厳かで緊張感が漂い、千咲はせっかくの料理もあまり食べられないかもしれないと思っていた。ところが。
「キャー、千咲ちゃん、想像していた通り可愛いわ! 澄春にはもったいないくらい!」
千咲が緊張しながら挨拶をした途端、帰ってきたのは場違いな悲鳴だった。
「……え?」
思わず瞬きをする千咲に、澄春の叔母と従姉ふたりが興味津々とばかりに迫ってくる。
「澄春は昔から口数が少なくて何を考えているのか分からない子だったの。結婚なんて絶対無理かと思ってたのに、こんなに可愛くて優しそうな子を捕まえるなんて!」
「そうそう澄春って、子供の頃からにかく冷めていたよね。結婚したといってもどうせ仮面夫婦でしょって話してたの。今日、予想が裏切られたわ」
「千咲さん、本当に澄春で大丈夫なの? 女心なんて絶対分かってないよ」
上から、叔母、従姉長女,従妹次女の発言だ。
三人とも澄春よりも年上なせいか、言いたい放題だ。
澄春に対する毒舌と、高いテンションに千咲は呆気に取られてしまった。
「あ、あの……」
「ん? どうしたの? 澄春のことでなにか聞きたいことがある?」
そう言われても、千咲がなにか言う隙がない。
あたふたしていると、挨拶の後、静かにお茶を飲んでいた澄春が千咲の代わりに答える。
「そんなに一気に話しかけられたら、驚いて何も言えなくなる。質問はひとつずつにしてくれ」
「ちょっと質疑応答の場じゃないのよ! 本当に情緒がないわね!」
澄春のフォローが、叔母たちの機嫌を損ねてしまったようだ。