第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 引き受けてくれるにしても、面倒そうな顔をされると思っていたのに。

 けれど、受け入れてもらえてよかった。

「ありがとうございます!」

 千咲は感謝の気持ちを表すように、深く頭を下げた。

 澄春はその様子を見て、目を伏せる。少しの沈黙の後口を開いた。

「そんな畏まる必要はない。楠木さんは勘違いしているみたいだけど、ベストマリアージュは普通の夫婦になることを目的としている。当然俺たちも含まれる」

「え、あの……」

 澄春の言葉の意図が一瞬分からず、千咲は戸惑ってしまう。

「家族への挨拶程度で、そんなに恐縮する必要はない。夫としての義務は果たすつもりだ」
「……はい」

(つまり、普通の夫婦のような感覚でいいってこと?)

 そう理解したとき、千咲はほっと胸をなでおろした。

 冷たく機械のような印象の彼に、少しだけ人間味を感じて安心したのだ。

「他に希望は?」
「いえ、祖母のことだけお願いできれば」

 本当にそれで十分、大満足だ。

(これでおばあちゃんも安心してくれるよね?)

 早く報告して喜ばせたい。千咲が祖母のうれしそうな顔を想像している中、澄春の冷淡な声が耳に届いた。[悠森27]
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