第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 結婚すると決めたのは自分自身なのだから責任を持たなくては。千咲は覚悟を決めてリストに視線を戻した。

【お互いが結婚に慣れるまで、夫婦生活はなし】

(……なんだ)

 よかった。ほっとした。肩の荷が下りた気分だ。

「なにか問題が?」

 ころころ顔色を変える千咲を不審に思ったのか、澄春が尋ねた。

「い、いえ大丈夫です。水無瀬社長」

 千咲は気を取り直して、次の項目に目を遣った。

【最後に千咲の仕事については本人の自由とするが、ふたりの結婚については婚姻届けを提出してから一カ月後に公表し、三カ月後には披露宴を行う】

「こ、公表するんですか?」

 千咲はついに高い声を上げてしまった。

「ベストマリアージュのリリース直前に公表することになっている」

 澄春は淡々と答える。千咲は彩香から聞いた話を思い出した。

(そう言えば社長自ら登録することで、宣伝効果を上げるって言ってたっけ)

 話を聞いたときは、自分が当事者になるなんて想像もしていなかったから平然と流したけれど、当事者となった今、逃げ出したくなるくらいの衝撃を感じた。

 公表された途端、千咲は一躍有名になるだろう。いろいろ陰口を言われるかもしれない。

「同僚の目が気になるなら、退職してもいい。経済的な心配はさせないと約束する」
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