第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 澄春の提案に、千咲の心は一瞬だけ揺れた。

 辞めた方が安全なのは間違いない。けれどすぐに迷いを捨てた。

「いえ、続けさせてください」

 澄春と結婚したら経済面の心配はないだろうが、依存するのは怖かった。

(もしかしたら離婚になるかもしれないし)

 そのとき仕事がないのは辛い。保険をかけておきたかった。

(公表の件は……そのとき考えよう)

 どちらにしても覚悟を決めるしかないのだから、一カ月の猶予があると前向きに考えることにした。

「それからこれを」

 澄春が薄いカタログを差し出した。

 千咲は戸惑いながらそれを受け取り、ぱらっと捲った[RY30]。

「……指輪ですか?」

「必要だからな。好きなものを選んでおいてくれ」

 千咲は思わず目を丸くした。

(高級ブランドの結婚指輪が、カタログギフト扱いされてる)

「気に入らないなら、他のものを用意する」
「い、いえ……十分です」

 こんなふうに結婚指輪を選ぶことになるとは思わなかったので、戸惑っただけだ。

「他に気になることは?」
「ありません」

 澄春は頷いた。

「この後外出するが、六時以降なら空く。面会時間に間に合うなら、おばあさまに挨拶に行こう」
 千咲は目を見開いた。

(さっき頼んだばかりなのに、今日挨拶に行ってくれるなんて……)
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