第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「君の都合がつかないなら明日にするか?」
「い、いえ、元々お見舞いに行くつもりだったんで……ありがとうございます」
「ああ」

 感謝でいっぱいの千咲に対して、澄春はにこりともせずに次の予定の準備をはじめた。

 ついさっきまで結婚について話していたのが嘘のよう。完璧に切り替えだ。

(まあ……水無瀬社長にとってこの結婚はビジネスだものね)

 彼の目的は自分が手掛けたアルゴリズムの正確さを確かめ、商品として成功しアローフォワードが更に飛躍すること。それから開発者としての責任感だ。

 祖母への対応に誠実さを感じたが、彼にとってはただ仕事を片付けているだけなのだろう。

(やっぱり感情がないみたい……)

 彼は普通の夫婦になるようなことを言っていたけれど、この調子では難しそうだ。

 千咲は冷やかさが漂う未来の夫の横顔を眺めながら、先行きの不安を感じたのだった。
 
 午後六時三十分。千咲は祖母が入院している私立病院のエントランスで、澄春と待ち合わせた。

 千咲は澄春を待たせないように五分前に到着した。ところが彼はそれよりも先に待っていた。

(嘘っ、もういる!)

 遠目から彼のすらりとしたシルエットを見つけると、千咲は大慌てで駆け寄った。

「お待たせして申し訳ありません!」
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