第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 自宅近くの食品スーパーまでの道中も、千咲はどこか緊張している様子だったが、野菜売り場に着くと澄春の存在を忘れたように、トマトの山の前で足を止めて動かなくなってしまった。

(どうしんたんだ? 買うんじゃないのか?)

 千咲はトマトが好きなようだ。生で食べたり、スープにしたり、パスタに入れたり。千咲と一緒に食べているうちに、澄春もトマトが好きなことが判明した。

 それまで気づいていなかったが、なかなか美味な食材だ。

 ふたりとも好きだからか、短い期間で何度も食卓に登場した。

 今日もストックを買うのだろうと思っていたが、なぜかかごは空のままだ。

「なにか問題があるのか?」

 澄春は邪魔をしない方がいいだろうと、しばらく見守っていたが、ついに千咲に声をかけた。

「一番新鮮で美味しそうなものを選んでるところです」

 千咲はトマトをじっと睨みながら答えたが、澄春は内心呆れてしまった。

(ただ選んでただけ? どれだっていいじゃないか)

 腐っていなければ、どれだって大差はないだろう。

 澄春の価値観では、こんなことに時間を使う方が無駄だと感じる。

 しかし止めはしなかった。自分の価値観を押し付けるのは好きじゃない。
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