第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
***
結婚十日目の午前八時。出勤時間になり澄春が玄関に向かった。
千咲は家事の手を止めて、見送りに出る。
「いってらっしゃい」
澄春が千咲をじっと見つめた。
「今日も別々に出勤するのか?」
「はい」
「乗って行った方が、早いし安全なのに?」
澄春は特別な事情がない限り、車通勤だ。彼は同居初日から、車に乗るように誘ってきた。同じ場所に行くのだから、別々に行動する必要はないと、合理的な判断のようだった。
しかし千咲は彼の申し出を断った。
結婚報告前に、澄春との関係を知られたくなかったのだ。彼は、いつばれても構わないと考えているようだが、千咲は余計なトラブルを避けるためにも、ぎりぎりまで秘密にしておきたい。
「ありがとうございます。でも大丈夫です」
「わかった」
澄春はそれ以上誘うことはなく引き下がり、出て行った。
彼は何度も誘ったりはしない。時間の無駄になるようなことはしないのだろう。
千咲は片付けを終えると、手早く身支度を整えてマンションを出た。
オフィスビル一階のコーヒーショップでカフェラテを購入してから、総務部のオフィスに向かう。