第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 澄春は淡々と答える。

「彼女がどうしたんだ?」
「実は今朝うっかりぶつかってしまったんです。それで持っていたカフェラテを零して、豊原さんの服を汚してしまったんです」

 あのときの凛華の顔は本当に恐ろしかった。

「それで?」

 澄春からは何ごともなかったような、短い返事が返ってきた。

「……申し訳ないことをしたと思って」
「そこまで気に病まなくていい。ぶつかったのは相手も前方不注意で避けなかったからだ。責任は彼女にもある」

 まるで現場を見たような客観的な判断に、千咲ははっとした。

「たしかに……」

(言われてみれば豊原さんの方からぶつかって来たような気もする)

 しかし服を汚した負い目から、全て自分が悪いと思い込んでいたのだ。

「もしかして彼女に怒られたのか? もし何か要求されているなら俺が対処する」

 千咲は思わず目を瞠った。

 彼の口からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった。

「でも……そんな迷惑はかけられないです」
「俺は夫なんだからかけていい」

 澄春はさらりと言う。

 頼もしい発言に、千咲の心は揺れた。

 そういえば、以前も彼は夫だからと言い、千咲を庇護するような発言をしていた。

(本当に頼ってもいいのかな……)
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