第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「それにね、今朝聞いた話なんだけど、社長自らテストに参加するんだって!」
「社長が?」

 それはかなり意外だった。アローフォワードを率いるのは水無瀬澄春(みなせすみはる)。
 今年で三十歳になる彼は、学生の頃から天才プログラマーとして名を馳せ、在学中にアローフォワードを立ち上げた。

 それから十年、常にIT業界の先端を走り、今では社員数三千人を誇る大企業へと成長を遂げている。

 高い技術力が評価され、取引先は一般企業のみならず政府や行政も含まれており今回の婚活アプリの開発を依頼されたのも当然の結果といえる。水無瀬澄春は経営者として誰もが認める有能な人物なのだ。

 しかし彼は非常に近寄り難い人物だ。

 無表情、無感動。

 千咲は彼が笑っているところなど見たことがない。千咲の上司である総務リーダーが、大きなミスをして怒られたときに居合わせてしまったことがあるが、そのときですら、冷ややかな目で相手を見据えるだけだった。

 まるで無能な人間を切り捨てるかのように。

 そんなときの彼は本当に怖い。厳しい叱責をされた方がましなのではないかと思う。

 しかし水無瀬澄春は驚くくらいハイスペックな人間だ。天才で容姿端麗、社会的地位が高く、唸るほどの財産を持っている。
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