第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 その間、澄春はひとり放置されたままだった。

 大人しいと思っていた千咲の思い切った行動に、驚いてしまったのだ。

 その後、同じような場面に居合わせたが、二度目は澄春も慣れたもので、彼女に代わって対応した。

 澄春は善人ではないし、正直言うと見ず知らずの他人に関心がない。けれど放っておいても千咲が世話を焼こうとする。それなら自分が動いた方が早い。

『人助けが趣味なのか?』

 澄春は思わずそう聞いていた。

『まさか。私に人を助ける余裕なんてないですよ。ただの習慣のようなものです』

 千咲は心外だとでもいうような顔をして答えた。本人はあまり自覚がないことが分かった。

『それに困っている人を見かけてしまったら無視はできないですよね。人はひとりで生きている訳じゃないんですから。気づかないかもしれないけど、必ずどこかで誰かに助けて貰っていると思うんです』

 彼女はよく人助けをしているようだが、お礼の言葉以外が帰ってきたことはない。

 労力ばかりがかかりリターンがない。損をするタイプだと思った。

 けれど、澄春はそんな千咲が好ましいと感じていた。

『たしかに、人はひとりでは生きていけないのかもしれないな』

 誰の助けもいらない。ずっとそう思っていたけれど、千咲の一言で考えが揺らいだ。
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