第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 千咲は深く息を吸い、覚悟を決めて微笑んだ。幸せそうに夫に寄り添う。

 澄春が壇上に上がり、パーティー開幕の挨拶を述べる。ベストマリアージュについての発表はパーティー後半で行う予定だ。
歓談時間が始まると、 澄春の下には招待客が次々と挨拶に訪れた。

 その度に彼は千咲を妻として紹介する。

 社内では人を寄せ付けない印象の彼だが、社交はそつなくこなしている。堂々とした振る舞いに、付け入る隙が見つからない流暢な会話。気品ある所作。

 それはオフィスとも家庭ともまた違った姿だった。

 煌びやかな上流の社会に生まれつき身を置いてきた彼は、誰よりも華やかな場に馴染んでいた。

 千咲は自分と澄春の住む世界が違うと改めて実感する。

 少し彼を遠く感じたそのとき、海外からの男性客が近づき、澄春と千咲に話しかけてきた。

 千咲はぎくりと固まった。何を言われたのかまるで理解できない。

(フランス語なのかな?)

 英語ですら日常会話でせいいっぱい。他の言語なんて更に無理だ。

 しかし澄春は流暢な会話を始める。

(澄春さん、すごい!)

 彼がプログラミングに類まれな才能を持っていることは知っていたけれど、語学まで堪能だったとは。
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