第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 空気が重くなったそのとき、正樹がやって来た。

「千咲さん、そろそろ社長のスピーチが始まるので用意してください」
「はい」

 澄春が登壇しスピーチをする間、千咲は彼の隣に立つことになっている。

「お先に失礼します」

 凛華たちにひと言かけてから、正樹について行く。凛華たちが何か言いたそうにしていたが、正樹がいるからかそれ以上絡まれることはなくてほっとした。

「凛華と何を話してたんですか?」

 大広間の前方に向かいながら正樹が言った。

「澄春さんと本当に入籍したのかと。私が結婚相手なのが不満みたいです」
「ああ……凛華らしい」

 正樹が遠い目になった。

「大丈夫でしたか?」

「はい。それほど長く話していたわけではないので」

 ストレスはたまったが告げ口するほどではない。

「それならよかった。でも今後も絡まれるようなら澄春に相談した方がいい」
「はい」

 凛華は正樹ですら用心する相手のようだ。

(関わらないようにしよう)

 決心を固めたところで、ひな壇の下に居た澄春と目が合った。

「行こう」

 彼は千咲が近づくと背中をそっと支えて、壇上に促した。

 ピンと背中を伸ばしながらゆっくり階段を上がり、人々が見下ろす位置に立つ。澄春がマイクの前に立ち口を開いた。
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