第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「本日はアローフォワード創立十周年を祝う集いに参加くださり、誠にありがとうございます。既に報道されていますが弊社は政府の少子化対策に協力する形で婚活向けマッチングサービス、ベストマリアージュをリリースいたしました」

 澄春は数百人の人たちを前にしても気負いなく流暢に言葉を続ける。

(すごいメンタル)

 千咲は隣に立っているだけだというのに、緊張して心臓がバクバクしているというのに。

「このアプリの狙いは登録者の中から相性のよい相手を見つけ出すことで、最短での成婚を叶えることにあります。相性判定のアルゴリズムは……」

(澄春さんはプライベートでは口数が少ないのに、仕事だと流暢に話す。声がいいから聞き心地がいいな)

 低く滑らかな澄春の語りに引き込まれていると、ひと際強い視線を感じた。

 ふと目を遣ると、ひな壇のすぐ前に凛華の姿があった。彼女は澄春ではなく千咲を見ていた。

(……めちゃくちゃ睨んでる!)

 今にも突撃してきそうな憎々し気な表情だ。

 彼女に憧れる同僚が見たら、目が飛び出すくらい驚きそうなほど。この状況があまりに納得がいかず、ひと目を気にする余裕もないのだろうか。

 そんなことを考えている間に、話は皆が一番気にしているであろう話題に移っていく。
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