雨宮くんと相合傘。

​「……なあ。お前さ、今、他の男のこと考えてた?」


​突然の言葉に、私は顔を上げた。

雨宮くんは前を見据えたまま、少しだけ不機嫌そうに目を細めている。



​「えっ?考えてないよ! 誰のこと?」

「ならいいけど。俺と相合傘してんのに、別のこと考えてたらお仕置きだわ」

​「お仕置きって……?」

「ひみつ」



​彼は意地悪く笑うと、私に指先でデコピンをした。


ちっとも痛くない、優しいデコピン。


​雨脚が少し強くなってきた。


地面に跳ねる雨粒が、私のスカートを濡らしていく。


​すると、雨宮くんはさりげなく傘を私の方に傾けた。


彼の右肩は、もうすっかり雨に濡れて色が変わっている。



​「雨宮くん、肩! 濡れてるよ!」

「あ? ああ、別にこれくらい平気」

「平気じゃないよ、風邪ひいちゃう。もっとこっち入って」



​私は慌てて、彼の制服の裾をぎゅっと掴んだ。

自分でも驚くほど大胆な行動。

​雨宮くんは一瞬目を見開いて、それからクスクスと肩を揺らして笑い始めた。



​「……何、今の。誘ってんの?」

「ち、違う! 濡れるのが心配で……!」

「ふーん。まあ、そういうことにしといてやるよ」



​彼は回していた手に力を込め、私の肩を抱き寄せた。

今度は、さっきよりもずっと強く。
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