恋煩いの処方箋
8.障壁と衝撃 side大和
8.障壁と衝撃 side大和
夢を見ていた。亜子が俺ではない男と結婚してしまう。そんな悪夢を。
何度目かのアラームで目を覚ますと、隣に寝ていたはずの亜子の姿を探す。
すぐにバスルームから水音が響いてきて俺はホッと胸を撫で下ろした。彼女がどこかに遠くへ行ってしまうのではないか、そんな不安がいつも付き纏う。早く和花を認知して、婚姻届を出したい。そこまでしてようやく、俺は心の底から安心できるのかもしれない。
ベッドから降りてバスルームへ向かう。扉をノックすると「入っていい?」と問いかける。
「いいけど……」
バスタブに浸かる亜子は気まずそうに視線を泳がす。昨日散々抱き合ったのに、恥ずかしい姿が可愛くてそんな彼女を愛おしく思う。
「起こしてくれたらよかったのに」
わざと拗ねたように言う。
「ぐっすり寝ていたからギリギリまで起こさないでおこうと思ったの」
「おかげで目覚めがよかったけど、起きたら亜子がいなくて寂しかった。おはようのキスもしたかったのにな」
「そ、そうだったの? ……なんか、ごめん」
頬を赤らめる亜子。いちいち照れるからつい揶揄いたくなってしまう。
「じゃあ、今しよっかな」
軽く触れる程度のキスをして、シャワーを浴びる。湯船に入ると亜子を背中から抱くようにして座った。
華奢な肩。俺よりもひとまわり以上も細い体に仕事と子育てという大変な事をひとりで背負わせてしまった。俺の罪は重い。だが、この結婚は罪滅ぼしなどではない。俺の初恋は亜子だったから。
幼い頃から兄妹みたいだと言われて育ったけれど、俺は彼女の事を妹のようだとは思うことはない。
医者の家系に生まれて、親の期待が煩わしかった。有馬家の人間だからと子供の俺にまで媚びへつらう大人が嫌いだった。
そんな俺の心の拠り所は間宮家の人たち。特に亜子の前では素の自分でいられた。彼女の笑顔はどんな薬よりも効果がある。心のカンフル剤だ。昔も、今も。
「ウエディングドレスはどんなのが似合うだろう」
「え、なに?急にどうしたの?」
確かに唐突だったかもしれない。けれど、ふとした瞬間に考えることはあった。そう遠くない将来俺たちは結婚式を挙げるだろう。規模は大きくても小さくてもいい、洋装でも和装でも構わない。彼女の花嫁姿を見てみたいと思った。
「きれいだろうなって思ってさ」
言いながら首筋にキスをするとくすぐったそうに身を捩る。そんな仕草さえ愛おしい。また触れたくなる。何度抱いても飽きることなんてない。そう思える女性は亜子だけだ。
夢を見ていた。亜子が俺ではない男と結婚してしまう。そんな悪夢を。
何度目かのアラームで目を覚ますと、隣に寝ていたはずの亜子の姿を探す。
すぐにバスルームから水音が響いてきて俺はホッと胸を撫で下ろした。彼女がどこかに遠くへ行ってしまうのではないか、そんな不安がいつも付き纏う。早く和花を認知して、婚姻届を出したい。そこまでしてようやく、俺は心の底から安心できるのかもしれない。
ベッドから降りてバスルームへ向かう。扉をノックすると「入っていい?」と問いかける。
「いいけど……」
バスタブに浸かる亜子は気まずそうに視線を泳がす。昨日散々抱き合ったのに、恥ずかしい姿が可愛くてそんな彼女を愛おしく思う。
「起こしてくれたらよかったのに」
わざと拗ねたように言う。
「ぐっすり寝ていたからギリギリまで起こさないでおこうと思ったの」
「おかげで目覚めがよかったけど、起きたら亜子がいなくて寂しかった。おはようのキスもしたかったのにな」
「そ、そうだったの? ……なんか、ごめん」
頬を赤らめる亜子。いちいち照れるからつい揶揄いたくなってしまう。
「じゃあ、今しよっかな」
軽く触れる程度のキスをして、シャワーを浴びる。湯船に入ると亜子を背中から抱くようにして座った。
華奢な肩。俺よりもひとまわり以上も細い体に仕事と子育てという大変な事をひとりで背負わせてしまった。俺の罪は重い。だが、この結婚は罪滅ぼしなどではない。俺の初恋は亜子だったから。
幼い頃から兄妹みたいだと言われて育ったけれど、俺は彼女の事を妹のようだとは思うことはない。
医者の家系に生まれて、親の期待が煩わしかった。有馬家の人間だからと子供の俺にまで媚びへつらう大人が嫌いだった。
そんな俺の心の拠り所は間宮家の人たち。特に亜子の前では素の自分でいられた。彼女の笑顔はどんな薬よりも効果がある。心のカンフル剤だ。昔も、今も。
「ウエディングドレスはどんなのが似合うだろう」
「え、なに?急にどうしたの?」
確かに唐突だったかもしれない。けれど、ふとした瞬間に考えることはあった。そう遠くない将来俺たちは結婚式を挙げるだろう。規模は大きくても小さくてもいい、洋装でも和装でも構わない。彼女の花嫁姿を見てみたいと思った。
「きれいだろうなって思ってさ」
言いながら首筋にキスをするとくすぐったそうに身を捩る。そんな仕草さえ愛おしい。また触れたくなる。何度抱いても飽きることなんてない。そう思える女性は亜子だけだ。