恋煩いの処方箋

「……どうか、しました?」
「いや、その……さっきの医者、間宮さんの知り合いですか?」
 どこか含みのある話し方に私は身構える。
「はい。幼馴染です。彼、有馬医院の若先生の息子さんです」
「ああ、有馬医院の。そうですか、そうか……」
 そう言い淀んだ後、意を決したように口を開く。
「俺の勘違いかもしれませんが、のんちゃんの父親ってあの医者ですよね」
 そう断言するに至ったのは、きっと私が動揺しているせいだろう。分かり易すぎると自分でも思う。勘の鋭い人でなくてもきっと気付く。
「ええと……」
「いや、いいんです。答えなくても、すみません。俺が変なこと聞いたから困らせてしまって、すみません」
なん度も謝りながら、杉崎さんは立ち上がる。
「俺、仕事戻りますわ」
 そう言ってまるで逃げるみたいに玄関への階段を降りていく。私は後を追って、外まで見送ろうとする。でも、「のんちゃんのそばに居てあげてください」と断られてしまう。
「お言葉に甘えてここで」
「はい、お大事にしてください。間宮さんも少しゆっくり休んでくださいね。のんちゃんにもよろしく」
 どこまでも人の良い気遣いの言葉を残して、杉崎さんはドアを閉める。私は深く頭を下げた。

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