幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】
 突然の核心を突く発言に、私の心臓は跳ね上がり、激しく動揺した。
「ええっ!? だって、付き合ってるんだし……もちろん……」

 続きの『もちろん、好きだよ』という言葉が喉に突っかかって出てこなくて、焦る。

(そうじゃん、私……まだちゃんと言えてない……!)

 タイミングがなかったし……っていうのは言い訳で。
 本当はきちんと、言葉にして伝えるべきだとわかってはいるのだけれど……。
 改めて面と向かって言うことを想像しただけで、顔がカアッと熱くなる。

 そこで、私はハッと苦しい言い訳を思いついた。

「さ……さっき、曲の歌詞の中で言ったよ!」

「はあ?」

 その無理矢理な主張に、なっちゃんが呆れた声を出す。

 そして、さっき自分が「近い」と咎めたのも忘れたように、私のほうへとグッと距離を詰めてきて、私を射抜くように見た。

「…………っ」

 あまりの近さと視線の熱さに、思わず目を逸らしてしまう。

「……俺の目を見て言って」
「…………」
「……めぐ。お願い」
「…………っ!」

 至近距離で、必死にすがるような、掠れた声で囁かれ、頭の奥がクラクラと痺れた。

(……逃げちゃダメ)

 私は意を決して、その黒い瞳を真っ直ぐに見つめ返した。


「…………なっちゃんが、大好きだよ」


(…………っ!)

 それだけをなんとか口にして、ブンッと勢いよく思い切り目を逸らした。

(『好きだよ』って言おうとしたのに、テンパって思わず『大好きだよ』って言っちゃった……!)

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなって俯いていると、ふいに腕を強く引っ張られ、身体が傾いた。


 息を呑む間もなく――唇に、柔らかな熱を感じた。


 触れるだけの、優しいキスだった。

「…………」
「…………」

 驚いて目を見開いたままでいると、なっちゃんも少し顔を赤くして、至近距離で私をじっと見つめ返していた。

 もう一度、彼の綺麗な顔がゆっくりと近づいてくる。

 今度は、さっきよりもそっと、少しだけ長く。
 お互いの体温と吐息を確かめ合うように、静かに唇が重なった。

 頭の中が真っ白になる。

 少しして唇が離れると、なっちゃんは私とおでこをくっつけたまま、吐息の混じった声で囁いた。

「……好きだよ」

「…………うん」
 震える声でそう返すのが精一杯だった。


 そのまま私たちは、利用時間終了を知らせる電話が鳴るまで、ゆっくり、何度か、キスを重ねた。

 ドアの向こう、別の部屋からわずかに聞こえてくる誰かの歌声を、遠くに感じていた。
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