幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。
 ◇

 和やかな雰囲気のまま、曲決めに移る。

 前回同様、嶋たちが事前に、演奏できる曲ややりたい曲を絞ってきてくれていた。

 今回も、持ち時間はだいたい二曲分だ。
 ノートに書かれた候補リストと睨めっこをする。

 ざっと目を通し、直感で二つのタイトルを指差した。

「俺は……これと、これかな」

 一つは、恋の楽しさをストレートに歌う、ハッピーでアップテンポなナンバー。
 もう一つは、恋人への深く温かい想いを歌い上げる、幸せなバラードだった。

「おっ、いいじゃん! うん、相性いいと思う!」

 僕の意見に、嶋が身を乗り出して賛成する。

「一曲目はキーボード、二曲目はピアノで弾けば、由利さんもどっちも楽しめるしな」

「それいいな」

「うん、賛成」

 他のメンバーからも次々と同意の声が上がり、あっさりと今年のセットリストが決まりそうになった。

 そのとき。

「……って、おい。待てよ」

 リストを見つめていた嶋が顔を上げ、ジト目で僕を見た。

「ん?」

「前回はさ、二曲ともどっちかっていうと『切ない系』だったじゃん? でも今回は、どっちもゴリゴリの『ハッピー系』だな……」

 そこまで言って、ニヤリと笑みを浮かべ、僕をビシッと指差してきた。

「まさか、朝井! お前の選曲、その時の自分の恋愛状況が反映されてないか!? これ、完全に私的な選択だろ!」

 全員から一斉に好奇の目を向けられる。

「……いやいや。普通に、好きな曲を選んだだけだって」

 鋭い指摘に返しが遅れたものの、笑って誤魔化しておいた。

 ◇

 無事に曲も決まり、教室に戻ってきた。

 入ってすぐ、黒板に向かって一番右前の席に腰を下ろす。
 今年も最初の席順はあいうえお順の名簿通りで、僕、『朝井(あさい)』の位置はここだ。

 次の授業の教科書を探そうと、ゴソゴソと机の中を漁っていると――。


「なっちゃん」


 後ろから、柔らかい声が飛んできた。
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