幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。
 その声に、大きく息を吐きながら振り返る。


「……その呼び方、やめてくれない? ……織田」


 真後ろの席から声をかけてきたのは――去年から継続して同じクラスになった、織田だ。

「えーなんで。俺もなっちゃんって呼びたい」

「やだ。だめ」

 間髪入れずに断る。

 なんだかこいつの、こうして遠慮なくワガママを言ってくる感じとか、どこか天然な雰囲気が、若干めぐみと似ているところがあって気に食わない。

(……いやいや、今のなし)

 めぐみは、こんな奴とは比較しようがないくらい可愛い。
 僕は脳内で即座に訂正を入れた。

『なっちゃん』呼びを否定された織田は不満そうに口を尖らせたが、すぐにへらっと目尻を下げた。

「まあいいや。俺、人見知りだからさ。朝井と同じクラスになれてよかったわー。今年も仲良くしてな」

「……どうしよっかな」

 わざとそっけなく返すと、織田は身を乗り出してきた。

「えー、いいじゃん。女の子の趣味も合うしさ!」

「…………」

 その言葉に、僕はジロリと織田を睨みつけた。

「こわっ! 冗談だって〜」

 織田はビクッと肩を揺らし、怯えたふりをしている。

(……ほぼ冗談じゃないだろ!)

 心の中で激しくツッコミを入れた。

 織田はたしかに、一時的だがめぐみに想いを寄せていた時期があった。
 僕とめぐみが付き合い始めてからは、特にアプローチする気配もないし、肝心のめぐみもこいつの気持ちにはまったく気づいていないようだから、とりあえず見逃してやってはいるが。

 でもまあ、こんなふうに全然面白くない冗談を言うところはあるが、根は優しくて穏やかな奴だ。
 話すのが楽なので、意外にもよく話す仲になっているのだった。
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